認知症徘徊者に命守る勇気のひと声

認知症徘徊者に命守る勇気のひと声/埼玉・志木市で模擬訓練/地域での支え合いめざす/102人が参加 ルート各地点で声掛け

2014年08月07日 7面


 埼玉県志木市内で7月25日、徘徊する認知症高齢者への声掛け模擬訓練「命のひと声訓練」が開催された。市高齢者あんしん相談センター「せせらぎ」によると、こうした取り組みは県内初で、今回の訓練は2回目。当日は、市内外から102人が参加し、推進してきた市議会公明党(磯野晶子幹事長)らも視察した。


 「こんにちは」

 おぼつかない足取りで歩いてくる高齢の女性に、男性の1人が慣れない様子で声を掛ける。女性は晴れの日なのに雨傘を持ち、履物はスリッパ。視点も定まらず、元気がない。

 「どちらまで行かれるのですか」

 「息子に会いに」

 「暑いから、少し休みましょうか」

 「そうね、少し疲れたみたい」

 女性が腰を下ろして休んでいる間に、参加者が電話で通報。女性は無事、保護された。

 これは訓練の一コマだが、参加者も真剣だ。

    ◇ 

 警察庁によると、認知症による徘徊が原因で行方不明になる人は、年間約1万人。発見時には、すでに死亡している事例も多く、徘徊者に対しては、その家族だけでなく、地域が一体となって見守る必要性が高まっている。

 この日、市内の団地で行われた訓練では、まず▽認知症の人が安心できる声掛けの方法▽実際にあった徘徊の事例▽身柄を保護した上で通報することの大切さ――などを学習。実地訓練では、高齢者役の女性が、あらかじめ決められたルートを徘徊。参加者は各地点ごとにグループで声掛けを行い、最終地点で同センターへの通報、警察への引き渡しを行った。

 終了後、同センターの飯田敦所長は「関係機関や、近所の人と共に助け合うことが、高齢者の命を救うことにつながる」と強調。参加者は「簡単にできると思ったが、声を掛けた後の会話がイメージできず難しかった」「勇気を出してやってみることで、自信につながった」などと話していた。

 『公明党議員が積極的に推進』

 こうした取り組みについては、公明党の西川和男市議が、福岡県大牟田市の先進事例を飯田所長に紹介した上で、実施を提案していた。視察後、西川市議は「地域包括ケアシステムの構築も含め、地域の中で高齢者を支えていけるよう、積極的に取り組んでいきたい」と決意を語っていた。

 また、権守幸男県議も今年6月の県議会定例会で、模擬訓練のノウハウを県内の市町村に広めていく必要性を訴え、「認知症サポーター養成講座と模擬訓練をセットにすれば、より高い効果が表れる」と主張。県側は「声掛け訓練の必要性を周知し、多くの市町村において実施されるよう働き掛ける」と答え、講座と訓練をセットで行うことについても、具体策を講じる考えを示している。