児童養護施設の退所者“生活や将来に不安”が7割

児童養護施設の退所者“生活や将来に不安”が7割/埼玉県が実態調査報告/公明県議の提案で実施

2013年04月29日 7面


 児童養護施設などを退所した後の状況は?――。埼玉県は昨年4月から9月にかけて退所者への調査を実施し、先ごろ、「埼玉県における児童養護施設等退所者への実態調査報告書」を発表した。これを受け、公明党埼玉県議団(西山淳次団長)はこのほど、退所後の支援の在り方を探るため、熊谷市にある児童養護施設「おお里」(小野寺修三園長)を訪問し、職員らと懇談した。実態調査は昨年2月定例会で西山団長が提案していた。

 『自立支援促す施策を/党県議団が施設訪問、意見交換』

 『「アフターケアが必要」』

 児童養護施設は、虐待などの理由から家庭で暮らせない児童が生活する施設。原則18歳になると、就職や家庭復帰などをし、施設を退所しなければならない。

 報告書によると、「現在、働いている」と答えた人は66・2%。そのうち正規雇用の割合は55・1%だった。「月収」については20万円未満が全体の9割を占めた。「退所直後にまず困ったこと」では、「孤独感や孤立感」が44・1%で最も多かった。「困った時の相談相手」は、77・1%が施設の職員を挙げた。

 「現在、困っていること」【表参照】については、「生活全般の不安や将来のこと」が“大変困っている”“少し困っている”を合わせると68・5%と7割近くに達し、「生活費等、経済的問題」が同じく63・0%など、自立への不安が浮き彫りになった(いずれも複数回答)。

 実態調査は、県が所管する児童養護施設など24カ所を過去10年間に退所した2359人のうち、施設が連絡先を把握している612人を対象に自己記入式の調査書を郵送し、148人から回答を得た。県は今回の調査を踏まえ、社会的自立に向けた支援の施策につなげたいとしている。

 昨年2月定例会で西山団長は、児童養護施設を退所した子どもたちが、どのような道を歩んでいるのかが分からないままだと指摘し、退所後の実態調査を実施するよう提案した。

 これに対し、上田清司知事は「社会に羽ばたいた児童が、精神的にも社会的にも自立した社会生活を送るためには、施設退所後のフォローが重要であり、今後はそのような体制を取っていく」と答弁していた。

 児童養護施設「おお里」には、西山団長、石渡豊、蒲生徳明、権守幸男、安藤友貴の各県議が訪問した。

 懇談の中で小野寺園長は、退所後も児童たちが“帰れる場所”となるように関わって支援していると説明。退所後の連絡先の把握件数が少ない理由として、連絡先の報告を強制できないことや、社会に出た後、施設にいたことを隠したいという児童も多いなどと指摘した。

 「おお里」では、3年前から退所した児童へのアフターケアに取り組み、電話での確認や家庭訪問などを行っており、退所者とのつながりが増えているという。

 また、小野寺園長は、社会に出てから孤独感などを解消するには「施設出身の人が気軽に集まれるような場所があれば、緩和できるのではないか」と述べ、県としてアフターケアを強化するには人員を増加し、担当する人が必要と強調した。

 西山団長は、児童が自立した生活を送るためには退所後も支援していく必要があるとし、「今回の懇談を参考にして施策を検討していきたい」と話した。